QUEST FOR THE CENTREPIECE by buna

まるで蟻とキリギリス




歳を重ねると、それまで人生をどう生きたが、その人の顔に現れると言います。
これが本当なら怖いですね。整形でもしない限り嘘はつけませんからね。
同じように40代は、それまでの生き方の結果が、色々なかたちで現れる時期のようです。
ある人は身体の故障として、ある人は今までの努力が報われたり。など。
そんな40代を目の前にした、30代後半での決断はこの先の人生を大きく左右するものになり、
以前のそれとは重みが違いそうです。

今回は小説風に書いてみてみます。



まるで蟻とキリギリス

人で賑わう初夏の昼過ぎの街を歩きながら、
「これだけ街に人がたくさんいるのに、私がドキドキする人はいないわ」
友人Aは少し寂しそうに、何かを確かめるように言う。
そうなんだよね。と自分は大きく頷きながら無関心を装って答える。

数ヶ月間も音信不通の彼氏の存在。それが最近の彼女の悩みの一つだった。
「もう死んだものとして考えようと思って」
きっと時間が解決してくれる。そうとしか言えなかった。
場合によっては、時間が解決してくれないこともある。
もう何年も音信不通のイラストレーターの友達Yを思い出した。
育児ノイローゼになりかけていたことまでは、最後のメールのやりとりで知っていた。
奥さんは小柄な人で、セレクトショップで働くかわいらしい人だった。

「あの人には私しかいないのよ」耳にすると息苦しくなる言葉だ。
本人達がそれで良いのなら構わないのだけれど。
相手から大切にもされず、愛されてもいない場合、これは悲劇にしか思えない。
誰が言ったのか覚えていないけど、突き放すのも“愛”らしい。
「自分の存在が、相手を弱いままにしているかも。そんな風に考えたことはない?」

今まで時間と金があれば海外に行き、悠々自適に羽をのばすという、
理想的な人生をおくってきたらしい。
「自由を愛するが故に、こんな歳になっても結婚できなかった。
というか、結婚したいとさえ思っていないし。
そりゃ、結婚したいと思えるような人に出会えれば話は別だけど。
今は一緒に出かけてくれる人が欲しいだけ」
かるく頷いて聞いていると太陽が雲に隠れて、暗くなる。
「40代の女性が結婚出来る可能性は10%なの知ってる?」
知るわけがなかった。

人生はそんなにうまくはいかない。
友人Aは現在過労で倒れて療養中。貯金は全て医療費に使われている。
20代で結婚した彼女の友人たちは、子供が成人したことで自由を手にし、
旅行など、好きなことをしはじめている。蟻とキリギリスのような皮肉な話。
自由に生きてていいね。と言われる自分にとって、これは他人事ではなかった。
もちろん実際、自分が自由に生きているかどうかは別として。

「お互いに幸せが来るといいね」と言ってその友人は帰っていった。
まるで隣の部屋の会話が漏れてきたかのように。何故かその言葉が凄く遠くに感じた。
もはや自分が世間でいう“シアワセ”を手に入れたいと思っているかさえわからない。
ただ、シアワセを感じる瞬間がときどきあって、それがあるから生きている。
仕方ないから生きている。

buna

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